山口 パート看護師

認知症のある末期がんの患者さん

70代の男性で、認知症がある末期ガンの患者さんの話です。認知症のため感情のコントロールができずに、ものすごく機嫌がよくてニコニコしていると思ったら、急に激しく怒り出して罵ったり、ということがある方がいました。受け持ちのドクターの前ではいつも機嫌がよいらしく、病棟に移ってきた時も何のアナウンスもされていなかったので、最初罵られた時は本当にショックを受けました。面と向かって激しい言葉を浴びせられたことに加え、憎悪とか嫌悪とかそういうものが込められた表情に圧倒されてしまいました。
 振り返ってみると、それまで「ありがとう」と言われることの方が多くて、ひどいことを言われたことはなかったので、余計に衝撃を受けたのかもしれません。最初は、認知症のためということにも思い当たらず、自分がいけないのかととても落ち込みましたが、あまりにも見当違いの事を言われたし、同僚におそるおそる聞いてみたところ「認知だからねー。やだよね。」と軽く言われたので、私だけじゃないんだというのと、病気のせいだとわかったことでかなり気持ちは楽になりました。
 とはいっても、最初に心臓にぐさっときたことを、体の方が覚えていて、その患者さんに顔を合わせるのが本当に嫌で嫌でたまりませんでした。特に、点滴などの医療処置は、苦痛を伴うので、その患者さんの感情が怒りに変わりやすいことがわかったので、処置がある日は気が重くて仕方なく、本当に仕事をやめたいと思いました。
 夜勤の時の、巡回時も、寝ているだろうと思って見に行くと、ぱっちり目を開けていることがあり、それはそれでものすごくびっくりして怖くて、その当時は夜勤もとても嫌でした。そのうち、その患者さんもADLが落ちてきて、感情の起伏もみられないくらいになり、看取りまでの間に穏やかに過ごされたので、私もそれまでの恐怖感を少しずつ捨てて接することができるようになったのが、最期の救いだったように思います。